
生え替わり期の歯並びで見極めたいポイント
生え替わり期のお子様の歯並びは、成長とともに変わることがある一方、自己判断で様子見を続けると対応の時期を逃すおそれがあります。歯が重なって見えるのが一時的なものか、顎の成長や噛む機能を確かめたほうがよい段階なのか、迷う保護者のかたもいらっしゃるでしょう。この記事では、家庭で様子を見られる条件と、硬い物を避けるといった歯科医師へ相談したいサインをまとめました。相談してもすぐ治療が始まるわけではなく、定期健診でお子様の負担に気を配りながら確かめていく方法もお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 生え替わり期の歯並びは成長で変化することがあります。顎の育ちや噛む機能も確認しましょう。
- 硬い物を避ける、片側で噛む、受け口などは歯科医師へ相談する目安です。
- 経過観察中も定期健診を受け、食事や口まわりの癖を記録して伝えましょう。
子どもの歯並びを様子見するリスクは「見た目」より「時期」と「噛む機能」に表れる

お子様の歯並びを見守るか判断する際は、見た目の重なりだけでなく、顎の成長時期や噛む機能への影響に目を向ける必要があります。生え替わりの段階によって変化の仕方が異なるため、それぞれの特徴を整理していきましょう。
生え替わり期に下の前歯が重なって見える理由と、自然に整いやすい条件
乳歯から永久歯へ生え替わる混合歯列期に下の前歯が重なって見えるのは、乳歯よりも幅の広い永久歯が、まだ成長途中の小さな顎に生えてくるためです。一時的なスペース不足であれば、成長とともに並ぶ余地が生まれることもあります。
経過を見守れることがあるのは、乳歯の頃に歯と歯の間へ十分なすき間(空隙歯列)があった場合や、顎の横幅がこれから広がる段階にある場合です。また、横の乳歯が小さな永久歯へ生え替わるときに生まれるわずかな余裕が、前歯の並びを助けることもあります。一方で、奥の永久歯(第一大臼歯)が前へ移動してしまうと、前歯が並ぶための余地が減る場合もあります。そのため、生え替わり期には奥歯が前へずれるのを防ぎ、歯列全体の長さを保つ考え方も研究されています1。
「親も生え替わりで整った」が子どもにそのまま当てはまらない理由
保護者のかたご自身が「子どもの頃は歯が重なっていたけれど、生え替わりで自然に並んだ」という経験をお持ちでも、それがお子様にそのまま当てはまるとは限りません。歯の大きさや顎の骨格には遺伝的な要素が関わる一方、後天的な要因も大きく影響するためです。
例えば、お口がぽかんと開く口呼吸や指しゃぶり、舌で歯を押す舌癖、毎日の食べ方といった生活習慣は一人ひとり異なります。歯が生えてくる順番や、上下の噛み合わせのずれ方も同じではありません。私自身、2人の息子がおりますが、兄弟であっても年齢や性格が違えば伝え方を変えるのと同様に、お口の中の状態も親子や兄弟でそれぞれ違うと考えております。ご家族で受診を話し合う際は、過去に整ったかどうかではなく、今現在お子様の噛む機能や食べ方に変化があるかを共有の軸にしてみてください。
様子見を続けた場合に起こりうること:噛みにくさ、むし歯、顎の成長への影響
歯科医師の確認を経ずに自己判断で様子見を続けた場合、歯が重なった部分に歯ブラシが届きにくくなり、むし歯や歯ぐきの炎症が生じるリスクが高まります。また、上下の歯がうまく噛み合わないことで、硬い物を避けるようになったり、噛みやすい片側ばかりで噛む癖がついたりすることも少なくありません。前歯のすき間から空気が漏れて、サ行やタ行の発音に影響が出る場合もあります。
さらに、受け口(下顎前突)はあごの位置と前歯の傾きのどちらか、または両方が関わって起こり、お子様では口の中や外につける装置を使った治療が考えられます2。出っ歯(上顎前突)の傾向があるお子様でも、成長する時期に装置を使うとあごの育ちによい変化がみられることがありますが、効き方には一人ひとり差があり、長い目で見た最後の差は小さかったとも報告されています3。このようにあごの骨の育ちが関わる不正咬合(歯並びや噛み合わせの乱れ)では、様子見を続けることで、成長を生かした対応ができる時期が限られてくる可能性があるため、程度や一人ひとりの違いをふまえた見きわめが大切です。
早く始めればよいとも限らない:子どもの矯正で知っておきたい負担と後悔の理由
一方で、子どもの歯列矯正は早く始めればそれだけ有利になるとも限りません。矯正治療には、むし歯や歯周病、歯が動くときの痛み、歯の根が短くなる歯根吸収、治療後に歯並びが戻ってしまう後戻りといったリスクや副作用があります4。
また、出っ歯の傾向があるお子様を対象にした研究があります。早い時期に一段階目の治療をしても、永久歯がそろった後の二段階目の治療の長さや、最後の骨格・噛み合わせの結果は、後から始めた場合と大きな差がなかったと報告されています3。取り外し式の装置(床矯正など)では、決められた時間つけることや通院がお子様とご家族の負担になり、始める前の期待と実際の進み方にずれを感じて悩むこともあります。
ポイント
「様子見かすぐ治療か」の二択で考えるのではなく、お子様にとって無理のない時期を見極めるために一度歯科医師と情報を共有することが大切です。
歯科医師へ相談したいサインと、様子見を選ぶ場合の確認の進め方

ご家庭で様子を見守るか歯科医師へ相談するかは、日常の食事風景やお口元のサインから整理できます。タイプ別の目安と、経過観察を選ぶ際の進め方を見ていきましょう。
家庭で気づける相談のサイン:硬い物を避ける、受け口、前歯が閉じないなど
歯並びの状態によって、早めに歯科医師の視点を入れたほうがよい場合と、少し経過を見られる場合があります。ご家庭で気づきやすいサインをタイプ別にまとめました。
| 歯並びのタイプ | 早めに相談を考えたいサイン | 経過を見られることがある条件 |
|---|---|---|
| 歯の重なり(叢生) | 硬い肉や繊維質の物を避ける、乳歯が抜けないまま永久歯が後ろから生えて揺れがない | 生えたばかりでわずかに重なっているが、隣の乳歯が揺れていて顎の成長余地がある |
| 受け口(下顎前突) | 下の前歯が上の前歯より前に出て反対に噛んでいる、下顎を前に出す癖がある | 一時的な噛み癖で、奥歯の噛み合わせや骨格に大きなずれが見られない |
| 出っ歯(上顎前突) | 上の前歯が大きく出ていて口が閉じにくい、転倒時に前歯をぶつけやすい | 唇が無理なく閉じられ、前歯の傾きや突出の程度がゆるやか |
| 前歯が閉じない(開咬) | 奥歯で噛んでも上下の前歯にすき間がある、指しゃぶりや舌を出す癖が続く | 指しゃぶりなどの癖がすでに落ち着き、すき間が少しずつ狭まっている |
| 深い噛み合わせ(過蓋咬合) | 噛んだときに下の前歯がほとんど見えない、下の前歯が上の歯ぐきに当たる | 乳歯列期で、これから奥歯が生えて噛み合わせの高さが変わる途中にある |
表に挙げた「硬い物を避ける」「片側だけで噛む」「噛むときに顎が左右にずれる」といった様子は、見た目だけの問題ではありません。噛む機能(咀嚼機能)や顎の関節に負担がかかっているサインとして受け止める必要があります。ただし、顎の骨の位置関係や歯ぐきの中に埋まっている永久歯の向きは外からは見えないため、ご家庭での観察はきっかけづくりとし、最終的な判断は歯科医師の確認と組み合わせて進めていきましょう。
様子見を選ぶ場合に定期健診で確認したいことと、予定を待たずに相談したい変化
歯科医師に相談した結果「様子見(経過観察)」を選ぶ場合、それは何もしないで放置することとは異なります。定期健診の機会を活用し、生え替わりの順番に乱れがないか、永久歯が並ぶための歯列の長さが保たれているか1、噛み合わせや顎のずれ、口呼吸などの癖、むし歯のリスクを継続して確認していく方法です。
健診の間隔は、お子様の年齢や生え替わりの段階によって3〜6か月ごとなど異なるため、歯科医師と相談して決めていきます。また、春の学校歯科健診の用紙にある「歯列・咬合」の項目で、経過観察や受診を勧める記号(1や2の数字)がついた場合も、現在のお口の状態を確かめるきっかけになります。なお、経過を見守っている途中でも、お子様が歯や顎の痛みを訴える、硬い物を避ける食べ方が数週間続く、噛み合わせが急に変わったように見えるといった変化があれば、次回の健診予定を待たずに相談してください。
歯並びの相談はすぐに矯正開始ではない:検査は状態に応じて検討
歯科医院へ歯並びの相談に行くと、その場ですぐに矯正治療や頻繁な通院が始まるのではないかと心配されるかたもいらっしゃいます。実際には、まず保護者のかたとお子様から日頃の様子を伺い、お口の中を拝見したうえで、定期健診での見守りでよいか、詳しい検査に進むかを状態に応じて検討するのが一般的な流れです。
より詳しく調べる段階では、頭部X線規格写真(セファロレントゲン)で顎の骨格や歯の傾きを確かめることがあります。光学式の口腔内スキャナーで歯型を読み取って噛み合わせを記録したり、必要に応じて歯科用CTで骨の中の歯の位置を確認したりすることもあります。これらの記録は、すぐに装置をつけるためだけでなく、今後の見守り方を保護者のかたと共有する材料としても役立ちます。
子どもの矯正治療と、そのためのくわしい検査は、多くの場合は健康保険が使えない自由診療ですが、生まれつきの一部の病気などに伴う噛み合わせの乱れでは保険が使えることがあります。費用や期間、通う回数は、見守りで済むか、検査や装置を使う治療に進むかで大きく変わるため、当院の費用や検査・調整にかかる料金の扱いは、お口をみたうえでご案内いたします。治療を考えるときは、むし歯のリスクなど治療にともなう注意点の説明を受け、ご家族で話し合って決めることが大切です。
器具が苦手なお子様の相談前に、家族で準備しておきたいこと
以前の受診でお口の中に器具が入るのを怖がった経験があるお子様の場合、歯科医院へ向かうこと自体に緊張してしまうと思います。そのようなときは、予約時や来院時に「型取りや器具が苦手」「まずは見るだけにしてほしい」と遠慮なくお伝えください。一般的な歯科医療でも、強い不安や嘔吐反射がある場合にはリラックスして受診できるよう配慮する考え方があります5。私自身、人と話をすることが好きで、まずは「そのかたを知る!」ことを大切にしたいと考えております。お子様が歯科嫌いにならないよう気持ちを尊重し、また行きたいと思える場所を目指しておりますので、守山区や尾張旭周辺でお悩みのかたもまずはお話を聞かせていただければと思います。当院には屋根付きの駐車場が14台分あり、お車でもお越しいただけます。
受診の前にご家庭で次のような記録を準備していただくと、短時間でもお口の状態を把握しやすくなります。
- 食事のときの様子のメモ:かたい肉をいやがる、片側ばかりで噛む、食べ終わるまでに時間がかかるなど
- お口元や顔の写真:普段の口を閉じた正面・横顔や、イーと噛んだ状態のスマートフォン写真
- 口まわりの癖の記録:指しゃぶり、口呼吸、頬杖、寝ているときの歯ぎしりなどの有無
- 健診の記録:学校歯科健診の結果用紙や、母子健康手帳の記録
お母様やお父様のお口の健康は、お子様の将来の健康とも深く結びついています。ご家族の定期健診とあわせて、「下の歯の重なりと食べ方が気になる」と相談するところから一歩を踏み出してみてください。
ポイント
相談と治療開始は別の段階です。お子様の苦手なことやご家庭での気づきを共有し、定期健診の中で見守る計画を一緒に立てていきましょう。
よくある質問
Q. 歯並びは父親と母親から遺伝しますか?
A. 顎の骨の形や大きさ、歯そのものの大きさには、ご両親からの遺伝が関わることがあります。ただし、実際の歯並びや噛み合わせは遺伝だけで決まるわけではありません。口呼吸や指しゃぶり、舌の癖、普段の食べ方、乳歯のむし歯や生え替わる順番といった生活習慣・環境要因も重なって形づくられます。そのため、ご両親の経験だけで判断せず、お子様自身のお口の状態を確認することが大切です。
Q. 子供の矯正のデメリットや、床矯正で悩む理由は何ですか?
A. 子どもの矯正治療では、装置に汚れが溜まりやすくなることによるむし歯や歯ぐきの炎症、装置をつけた際の痛みや違和感、歯根吸収、治療後の後戻りといったリスクがあります4。また、取り外しができる床矯正などの装置は、毎日決められた時間つけないと予定どおりに進みにくくなります。生え替わり後に二段階目の治療が必要になる場合もあるため3、始める前の見通しとご家族の生活リズムをすり合わせておくことが求められます。
Q. 子供に歯列矯正をしないとどうなりますか?
A. 歯並びの乱れが軽度で、噛む機能や清掃性に大きな支障がなければ、特別な矯正治療を行わずに経過を見守ることもあります。一方で、重なりが大きい状態や噛み合わせのずれをそのままにした場合、磨き残しからむし歯や歯周病のリスクが高まったり、硬い物を避ける・片側で噛むといった咀嚼への影響が続いたりすることがあります。また、受け口や出っ歯など骨格が関わる状態では、成長期に検討できる対応の時期を過ぎてしまうこともあります23。
Q. 学校歯科健診で「歯列・咬合」に記号がついたら、すぐ治療になりますか?
A. 学校の歯科健診は、短い時間と限られた明かりの中で行うふるい分けの検査(スクリーニング)で、用紙の記号は「一度歯医者さんでくわしく見てもらいましょう」という合図です。歯列・咬合の欄は、0(異常なし)・1(決まった間隔で様子を見る)・2(歯科医師にみてもらう必要がある)の数字で書かれます。受診したからといってその日に治療が始まるわけではなく、生え替わりの進み具合に合わせた見守り方を相談する機会として使っていただけます。
参考文献
1. Rebellato J, Lindauer SJ, Rubenstein LK et al. Lower arch perimeter preservation using the lingual arch. American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics. 1997. PMID: 9345158 / DOI: 10.1016/s0889-5406(97)70054-4
2. Owens D, Watkinson S, Harrison JE et al. Orthodontic treatment for prominent lower front teeth (Class III malocclusion) in children. The Cochrane database of systematic reviews. 2024. PMID: 38597341 / DOI: 10.1002/14651858.CD003451.pub3
3. Tulloch JF, Proffit WR, Phillips C. Outcomes in a 2-phase randomized clinical trial of early Class II treatment. American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics. 2004. PMID: 15179390 / DOI: 10.1016/j.ajodo.2004.02.008
4. 大阪大学歯学部附属病院「矯正科」 https://hospital.dent.osaka-u.ac.jp/departments/orthodontics/
5. 公立大学法人 九州歯科大学附属病院「歯科麻酔科・ペインクリニック」 https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/anesthesia/
2013年 朝日大学医科歯科医療センター 研修医
2014年 医療法人愛健会 エムデンタルクリニック 勤務
2016年 おちデンタルクリニック長久手 副院長就任
2024年 森のまち歯科 開院
日本口腔筋機能療法学会
インビザライン認定ドクター
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会
名古屋市歯科医師会
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